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平松 洋子・評『花の百名山』田中澄江・著

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好きだから引き寄せられ、畏れとともに山を登る

◆『花の百名山』田中澄江・著(文春文庫/税別840円)

 田中澄江。その名前が不意に目に飛び込んできたとき、ひどくなつかしい気持ちになった。胸の奥のほうに鎮まっていた姿がむくむくとふくらむのを感じ、初版刊行から三十七年ぶりの復刊だという本書へのうれしさが湧き上がってきた。

 私が田中澄江を知ったのは、成瀬巳喜男監督の映画「めし」「流れる」、吉村公三郎監督「夜の蝶」などの脚本家としての仕事によってだったが、戯曲家、小説家としても広く知られる。1908年生まれ、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)卒業。夫は劇作家の田中千禾夫(ちかお)。旺盛な執筆活動のかたわら、登山家として山へ情熱を注ぎこんだ。本書には、さまざまな山行の途中で出会った花々への思いが溢(あふ)れ返…

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