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天があたかもタイミングをあわせてくれたかのように、帰路へついた矢先に空が白みはじめていた。
それからまた気が遠くなるくらいのあいだ海上をひた走り、柏崎マリーナに帰りついたときには太陽が子午線すら通過し、いくらかながら宵のほうへと傾きだしてしまってさえいた。
そのため下船してみると、深夜の出航時に見ていたのとはまるで異なるまぶしい風景があたりにひろがっていた。別世界よりもどってきたつもりが、さらなる別世界へとたどり着いてしまったような感覚をおぼえたが、それをしみじみ味わっていられるほどの余裕は横口健二は持ちあわせていなかった。
往路よりも復路のほうが倍ちかく時間がかかってしまったのは、ガス欠を避けるべく燃費を最優先にした航行を船長が心がけた結果ではあるようだがそれだけでもない。
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