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犬が西向きゃ

国際報道に優れたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した、高尾具成編集委員のコラム。

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ヒロシマを奏で続ける=高尾具成

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 ギタリストの伊藤茂利さん(68)=東京都町田市=は、音楽を通じて広島、長崎への原爆投下により被爆した人々の思いや命の尊さを伝えている。広島平和記念公園(広島市)にある被爆樹木の一つアオギリの下、被爆体験を語り続けた沼田鈴子さん(2011年に87歳で死去)との出会いは大きかった。

 活動を共にするシンガー・ソングライターの中村里美さん(58)らと、沼田さんをモデルにした映画「アオギリにたくして」(13年完成)の製作に、音楽監督として参画した時のことを繰り返し、考えてきた。「沼田さんが言ったんだよね。『頼んだよ』って」。その約1カ月後、広島市内であった演奏を終え、沼田さんの被爆当時の勤務先だった旧広島逓信局(現・日本郵便中国支社)に立ち寄った直後に訃報が入った。葬儀場に駆けつけ、「待っていてくれたような」沼田さんと対面した。

 8月、演奏で大阪を訪れた伊藤さんに会うと「やっといい音を出せるようになってね」としみじみと言う。6年間ほど生死をさまようほどの大病をし、薬の副作用にも苦しんだ。そして「『頼んだよ』に託された思いについてね。感覚的に分かりかけた部分があるんですよ」という。この夏、内外に広がる「被爆アオギリ2世」を見つめ直す機会を作ろうと、中村さんと新たな活動を始めていた。

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