「株式会社」の看板だった神戸ワイン 存続かけ「白鶴」が事業継承

ワイン用ブドウの生育状況を見る萩原重実さん=神戸市西区で2024年6月28日午後3時32分、山本康介撮影
ワイン用ブドウの生育状況を見る萩原重実さん=神戸市西区で2024年6月28日午後3時32分、山本康介撮影

 神戸ビーフと合わせて楽しむワインを――。こんなコンセプトで、官民一体となって1984年に誕生した神戸ワインの製造・販売が、神戸市の第三セクターから大手日本酒メーカーに継承される見通しとなった。バブル景気やワインブームと相まってブランド力を高め、「株式会社神戸市」と称された都市経営策の看板商品だったが、近年は販売量が低迷。発売40年の節目に大きな転機を迎えている。

 同市西区平野町印路(いんじ)地区の台地。約8・7ヘクタールにブドウの木々が広がる。6月下旬、枝先に生えた手のひらほどの葉の陰に、小ぶりなブドウの房が実っていた。メルローやシャルドネなどワイン向けの品種だ。

 ブドウ園は、7人が加盟する印路生産組合が91年春から手掛けている。代表理事の萩原重実さん(74)は収穫を2カ月後に控え、「今のところ順調に育っている」と語った。一方でこう付け加えた。「あまり雨が降らない土地だったのに、最近は降りすぎる。夏場も暑すぎて、ええもんができなくなっているんですわ」

官民一体で誕生40年

 市北西部に位置するこの一帯は元々、年間の降水量が少なく、水不足に悩まされてきた。それを解消するため、70年から20年以上かけて国による大規模な水利事業が進められた。

 それと同時に、気候条件や水はけの良い土壌を生かし、ワイン向けブドウの生産が始まった。計108ヘクタールの丘陵地がほ場に造成され、第13代市長の故・宮崎辰雄氏も知名度の高い神戸ビーフに合うワインを作ろうと農家と意見を交わし、技術指導をする職員に国内外の主要産地を視察させた。

 神戸ワインは13年の準備期間を経て完成した。…

この記事は有料記事です。

残り1464文字(全文2149文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月