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「内部告発」をまさかの撤回 取り調べ批判の警官、証人尋問を前に

「どっちが犯罪者か分からん」などと上司を批判した文書について、「過激な表現だった」と弁明する巡査部長の陳述書=2024年8月9日、遠藤浩二撮影
「どっちが犯罪者か分からん」などと上司を批判した文書について、「過激な表現だった」と弁明する巡査部長の陳述書=2024年8月9日、遠藤浩二撮影

 「内部告発者」は権力に取り込まれてしまったのか。

 ある冤罪(えんざい)事件で上司の取り調べを批判する文書を作成していた警官が、裁判に証人として出廷することになった。

 しかも、違法な取り調べがなかったと主張する捜査当局側の証人として。

 立場を180度転換したようにも見えるこの警官が説明する、その不可解な理由とは――。

「どっちが犯罪者か分からん」

 冤罪事件は、化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)が製品を不正輸出したと疑われたものだ。

 警視庁公安部が社長ら3人を逮捕し、東京地検はいったん3人を起訴したものの、初公判の直前に起訴を取り消した。

 この事件では、取調官を務めた警部補の取り調べも問題になっている。

 明るみに出したのは、取り調べに同席した巡査部長とされる。

 自身の上司にあたる警部補の振る舞いを同僚に告げ口。さらに「どっちが犯罪者か分からん」と警部補を批判する文書を作り、この文書は別の上司の手に渡った。

 一種の内部告発と言え、複数の捜査関係者も取材に「巡査部長は警部補の取り調べを問題視していた」と明かす。

 ところが、巡査部長は今になって、自ら作った文書を「過激な表現だった」と弁明し、批判のトーンを著しく後退させているという。

 巡査部長は10月9日、大川原化工機事件の関連訴訟に出廷し、証人尋問を受ける。そこでいったい、何を語るのか。批判色を消した理由は何なのだろうか。

酒席で同僚に漏らしたのが始…

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