毎日地球未来賞

毎日地球未来賞 NPO法人愛のまちエコ倶楽部/熊本県立熊本農業高校「養豚プロジェクト」

 食料・水・環境分野の問題解決に向けた取り組みを顕彰する第11回毎日地球未来賞(毎日新聞社主催、クボタ協賛)の受賞者が決まった。一般の部は菜種油の徹底活用を通じて地域循環型社会の実現を目指す滋賀県東近江市の「NPO法人愛のまちエコ倶楽部(くらぶ)」、学生の部は食品廃棄物を原料とする飼料「エコフィード」で肉質の良い豚を育てている熊本市南区の熊本県立熊本農業高校「養豚プロジェクト」が選ばれた。それぞれの活動を紹介する。

バイオディーゼル燃料のプラントを前に、地域の中学生に製造過程を説明するNPO法人愛のまちエコ倶楽部のスタッフ(左奥)=同倶楽部提供 拡大
バイオディーゼル燃料のプラントを前に、地域の中学生に製造過程を説明するNPO法人愛のまちエコ倶楽部のスタッフ(左奥)=同倶楽部提供

菜種油で「循環型」へ NPO法人愛のまちエコ倶楽部

 愛のまちエコ倶楽部は、1977年の琵琶湖の赤潮発生を機に旧愛東町(東近江市愛東地区)で生まれた住民の廃食油リサイクル活動が源流。活動の柱に「菜の花エコプロジェクト」を据える。

 休耕地で栽培する菜種から化学薬品を使わず搾油。県内の百貨店や道の駅で販売し、学校給食にも活用する。搾油後の油かすは肥料にし、茶農家が利用。廃食油を回収し、粉せっけんやバイオディーゼル燃料(BDF)にリサイクル。BDFは市内のコミュニティーバスの燃料になる。

 学校に出向いての環境教育や、活動拠点で菜種油やBDFのプラント見学を受け入れる。農家民泊や農作業体験にも取り組む。

 受賞を受け野村正次理事長(65)は「地域の人たちとのつながりを財産に、持続可能な社会への取り組みを更に深めたい」と話す。

飼育する豚に食品廃棄物を原料にした飼料「エコフィード」を与える熊本県立熊本農業高校養豚プロジェクトのメンバー=同校提供 拡大
飼育する豚に食品廃棄物を原料にした飼料「エコフィード」を与える熊本県立熊本農業高校養豚プロジェクトのメンバー=同校提供

飼料安定化に廃棄物 熊本県立熊本農業高校「養豚プロジェクト」

 熊本農業高校養豚プロジェクトは、輸入飼料に大半を頼る畜産農家の経営改善に向けた研究。飼料の安定供給とコスト削減に食品廃棄物を有効活用する。

 地域の企業を調べ、期限切れのパンや、削り節の製造過程で出る魚の頭、菓子くずなど16社から17種を回収。成長に合わせて配合を変え、哺乳期の生後20日から出荷する同180日まで与える。市販飼料での飼育に比べ、1頭当たりの飼料費を2万3454円から762円に大幅削減。肉はうまみとビタミンEが向上した。廃棄物からおいしい豚肉。魔法のような変化に「シンデレラネオポーク」と名付け販売している。

 研究成果の地域還元で企業と畜産農家を仲立ち。食品廃棄物250トンを飼料にし、16社の経費を計約1200万円削減、農家14軒の所得を向上させた。豚肉加工時に廃棄する豚脂から洗濯用せっけんも製造する。

 プロジェクト代表で同校2年、今本天音(あまね)さん(17)は「受賞でエコフィードの良さが注目され、各地に企業と農家の連携が広がれば」と期待する。【石村綾子】

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