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リブラ延期と国際社会 デジタルの功罪見極めを

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 世界のお金の流れを一変させそうなデジタル通貨を巡って、国際社会が大きな課題を投げかけられた。

 米フェイスブック(FB)は来年前半に予定していたデジタル通貨「リブラ」の発行を延期する。主要20カ国・地域(G20)の財務相らが厳格に規制すると決め、米当局の承認を得るのが当面難しくなった。

 ネットで取引されるリブラは、従来の投機的な仮想通貨(暗号資産)と違い、国際送金や支払いを行いやすい。銀行を通さずスマートフォン一つで可能だ。紙幣も硬貨もないが、20億人超のFB利用者らに一気に広がる、との見方も出ていた。

 G20の懸念は理解できる。

 政府や中央銀行が関与しないお金が出回ると経済が不安定になりかねない。テロや犯罪に悪用される恐れも高まる。しかもFBは個人情報の流出問題を起こした。お金のやりとりという大事な情報をきちんと管理できるのか、との不安が募る。

 ただし、リブラ固有の問題とは別に、デジタル通貨そのものには社会的な意義がある。

 移民の増加に伴い、母国の家族への送金も多くなっている。だが銀行の手数料は高く、負担は重い。

 そもそも銀行口座を持たない人は世界で17億人に上る。途上国を中心に銀行が整備されていないからだ。

 既存の金融から取り残された人たちの暮らしを便利にするものだ。

 世界経済はネット通販などデジタル化が急速に進んでいる。通貨のデジタル化も自然な流れだ。リブラの発行がしばらく難しくなっても、別の企業が乗り出す可能性がある。規制一辺倒ではなく、技術革新の成果を生かす方策も求められる。

 懸念されるのは、リブラを機に通貨の覇権争いが激しくなることだ。

 トランプ米大統領は「世界を支配するのはドル」とリブラに敵意をむきだしにした。身勝手な「米国第一」がさらに勢いづいては困る。

 米国と対立する中国は人民元デジタル化の準備を急いでいる。経済圏の拡大に利用し、ドル中心の国際秩序に挑む狙いとみられている。

 大国の思惑に左右されると、デジタル通貨の意義が見失われる。

 国際社会はデジタル通貨の功罪両面を見極めて、安心と利便性が両立するあり方を議論すべきだ。

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