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まるで「ダミーの防犯カメラ」 五輪プレーブック違反者の国外退去

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記者会見する菅義偉首相=首相官邸で2021年5月28日午後8時11分、竹内幹撮影
記者会見する菅義偉首相=首相官邸で2021年5月28日午後8時11分、竹内幹撮影

 「大会期間中、悪質な違反者については国外退去を求めたいと思っています」。緊急事態宣言下でもオリンピック・パラリンピックを開催できるのか、と問われた菅義偉首相が5月の記者会見で述べた言葉だ。新型コロナウイルスの感染予防対策に従わない場合、国外退去を求めるという。五輪開幕を目前に控え、選手や大会関係者が続々と来日しているが、「国外退去」とは、スポーツの祭典に似つかわしくない物騒な話だ。菅首相は国民に「安全安心」な大会をアピールして発言したのだろうが、本当に国外退去させることなどできるのか。入管行政に詳しい法律家に聞くと、非現実的というのだ。【菅野蘭/デジタル報道センター】

菅首相「悪質な違反者は国外退去」

 菅首相や加藤勝信官房長官の発言をおさらいする。

 5月14日の記者会見で、来日する大会関係者らと一般人との接触対策について問われた菅首相は「(大会関係者らの)行動を制限をする。それに反することについては、強制的に退去を命じる。そうしたことを含めて、今検討している。一般の国民と関係者で来られた人とは違う動線で行動してもらうようにする」と答えた。

 さらに5月28日の記者会見では「国民の命と健康を守るのは、これは当然、政府の責務」と発言。来日する海外の報道陣を含め、大会関係者の宿泊先は組織委員会が管理するホテルに集約し、外出先は事前登録された場所だけ認め、移動手段は専用のバスやハイヤーに限定するなどとして「大会期間中、悪質な違反者については国外退去を求めたいと思っています」と述べた。

 5月14日の菅首相の発言について説明を求められた加藤官房長官も5月17日、「偽りその他不正な手段により上陸許可を受けたと認められた場合、在留資格を取り消すことができる」と規定した入管法第22条の4を挙げ、こう述べた。「大会関係者が入国前に提出する誓約書の内容を入国前から順守する意思がないこと、かつその誓約書の内容に反する行為が行われた場合には、出入国在留管理庁(入管庁)において必要な調査を行い、違反事実や在留状況等について総合的に考慮し、在留資格を取り消すことが適当かどうか適切に判断することとなり、その結果退去強制手続きを取ることも可能。今後検討するが、水際対策ではそうした措置が既にとられている」

 新型コロナウイルスの水際対策では、入国した人は14日間自宅や宿泊場所などで待機し、入国者健康確認センターに健康状態の報告をすること▽指定されたアプリをインストールして通知が来たら位置情報の送信をすること――などを空港の検疫で誓約してもらう。こうした誓約に違反するなどした場合は氏名が公表され、外国人の場合は在留資格取り消し手続きや国外退去手続きなどの対象になり得る、などとする内容だ。

 つまり、組織委を通じて水際対策と同趣旨の管理を選手や大会関係者らにも適用するというのが政府の基本的なスタンスだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会が6月に発表した感染防止の規則集「プレーブック」にも、「措置や指示に違反した場合、14日間の隔離や、在留資格取り消し手続き及び退去強制措置など厳しい行政措置が取られる」と同様の記載がある。関係者は、組織委を通じて日本のルールを守ることを誓約する必要があり、来日前に提出する「本邦活動計画書」に書いていない場所に行ったり、故意にマスクをしなかったりした場合は、警告や金銭的な制裁など懲戒措置があるほか、国外退去などの行政措置がとられる可能性がある。

水際対策で在留資格取り消しはゼロ

 しかし、…

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