問題作「アートなんかいらない!」 自称“不感症”の映画監督の本心

映画「アートなんかいらない!」より。「三鷹天命反転住宅」と、ラブドールのりりさん
映画「アートなんかいらない!」より。「三鷹天命反転住宅」と、ラブドールのりりさん

 新型コロナウイルスの流行で「アートは不要不急」と言われた時、アートを愛する人たちは一斉に反発した。3年を経て「不要でも不急でもない」という認識はそれなりに広まったように見える。

 「アートなんかいらない!」という挑戦的なタイトルのドキュメンタリー映画が全国で順次公開されている。製作したのは、もともとはアートが好きだったが、いろいろあって今は“アート不感症”になったという映像作家の山岡信貴さん。アートの限界と可能性を探るべく約30人にインタビューし、2部作で計約3時間の長編を世に問うた。

 「アートなんかいらない」。それは本心からくる叫びなのか、愛情の裏返しか。山岡さんに聞いた。

きっかけは、あいちトリエンナーレ

 山岡さんは2010年、芸術家・荒川修作の仕事に迫った「死なない子供、荒川修作」を、18年には「縄文にハマる人々」を製作した。自身も縄文文化にどっぷりハマり、全国各地の遺跡や史料館を巡るうち、美術館で見る「アート」への感動が薄れていることに気付いたという。

 そこに起こったのが、19年の「あいちトリエンナーレ(あいトリ)」を巡る騒動だった。あいトリの企画展「表現の不自由展・その後」が作品への抗議や脅迫を受け3日目で中止になった時、山岡さんは「抗議する側も『一本取られた』と思うような、アートならではの返答があるだろう」と期待した。

 ところが、…

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