繰り返された誤爆、民間人の犠牲5万人 今も抱く米への怒り/4
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アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが20年ぶりに復権した。米国主導の国際社会は心血を注いでアフガンの民主化を支援してきたが、事実上頓挫した。背景には何があったのかを探る。【カブールで松井聡】
2015年10月3日未明、アフガニスタン北部クンドゥズ州。農家のアブドルラフマンさん(48)は、米軍の空爆音で目を覚ました。「弟は大丈夫だろうか」。当時タリバンは猛攻を仕掛け、州都クンドゥズを一時制圧。米軍を後ろ盾とする政府軍と激しい戦闘を繰り広げていた。
弟のモヒブラさん(当時38歳)は、国際医療NGO「国境なき医師団」(MSF)の看護師として、アブドルラフマンさんの自宅から数キロ離れたMSFの病院に勤務していた。
アブドルラフマンさんは、夜が明けるのを待って弟の携帯電話を何度も鳴らしたが、つながらない。高まる不安の中で、連絡が取れたモヒブラさんの同僚が言いよどんだ。「病院が空爆された。残念ながらモヒブラは――」。胸が張り裂けそうだった。
その日の午後、病院を訪ねると、言葉を失った。北部で最も設備が整っていた病棟は破壊され、焦げくさい臭いが充満していた。地面はまだ熱く、所々から煙が噴き上がっていた。病院への空爆は200回以上に及び、約30分続いたという。
その約2カ月後、米軍は病院への攻撃を誤爆と結論づけ、予定していた建物と取り違えた「人為的ミス」だと主張した。MSFによると、職員や患者ら計42人が死亡。当時、オバマ米大統領が謝罪した。
だが「意図的に病院を狙った」と見る人も多い。タリバンの…
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